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小泉文夫「歌謡曲の構造」

歌謡曲の構造 (平凡社ライブラリー)

小泉 文夫 / 平凡社



シルバーウィークのおかげで、ゆっくり本が読めました(笑)。
書かれたのが70年代から80年代前半にかけてなので
現在の歌謡曲(J-POP)シーンとは若干異なったり
あれれ?と思う部分もあるけれど
現在に至る日本のポピュラー音楽の形成史を考えるにあたって
もんのすごい参考になる本だとおもいます。

てゆか、最近70年代の歌謡曲に思い切りハマってしまいまして
レンタルCDへ行くたびに、このあたりの有名な曲が詰まったオムニバス盤を
借りまくっております。
なかでも「京都慕情」と「かもめが翔んだ日」は昔からすきな曲です。
アレンジの展開と歌詞が、かなり自分好みであります。
この頃の楽曲は、今よりももっとジャンルが混沌としていて
何でもありなサウンドが逆に新鮮です。
70年代、80年代、90年代と年代を追っていくごとに、使われる楽器が変わってきたり
80年代以降、欧米のポップスやR&Bの要素が徐々に浸透していく様が
並べて聴いてるとけっこうよくわかります。
スネアドラムとギターの音の流行の変わりようは、特に興味深いです。
昔の歌謡曲ほど、比較的大編成のバックバンドで
ストリングスのアレンジがかなりハデに使われてますね。
この辺は、きっと、音楽ビジネスのありかたの変遷なんかと密接に関わってるんでしょうね。







で、この本はというと
歌謡曲を「民族音楽」のひとつと捉えて
西洋音楽と、日本音楽(というか、日本的な音感)が
どのように混じり、歌謡曲ができあがっていったのかを
何曲もの実例を交えて、論が展開されてます。

よく「昔の歌謡曲は、いい曲が多かったね」とか
「昔のヒット曲は、誰でもすぐに歌えたよね」とか言われるけど
その理由が、ひじょうにわかりやすく述べられています。
戦後の多くの歌謡曲が、日本人の心をつかんだ理由について
いろんな根拠を挙げて説明されているのですが
最もわかりやすいのは「旋法」や「音階」と呼ばれるもの。
日本人の嗜好に合った音階が取り入れられていた点にあります。
その音階とは、5音音階。
とりわけ「ヨナ抜き音階」と「ニロ抜き音階」。
詳しい説明はここをご覧いただくこととして
これらは、日本の民謡や古楽に用いられてきた旋法です。
前者は、雅楽の呂旋法が元になっているそうでして
後者は、民謡の旋法が元になっております。
いわゆる「演歌」と呼ばれる音楽の多くは
この「ヨナ抜き音階」で作られています。

ちなみに、よく「演歌は日本人の心だ」という言われようをしますが
これは、ちょっと微妙なところじゃないかなと思います。
演歌の元になっている音階は、雅楽の音階ですが
その雅楽自体が、中国や朝鮮から伝わってきたものですので
日本が起源である、とは言えないわけです。
さらに、有名なところだと「蛍の光」なんかがそうですが
この「ヨナ抜き音階」は、世界各国の民謡で聞かれる旋法でもあります。
スコットランド民謡のほかに、南米のフォルクローレなんかにもみられるそうですね。
どちらかというと、広く世界中で普遍的に受け入れられる旋法、といえるのかもしれません。

話がそれましたけど
つまりは、日本人が昔から慣れ親しんできた旋法をもとにして
作られている歌が多い、ということでしょうか。
戦後の作曲家たちが
日本人の耳にあったさまざまな旋法を一曲の中でいくつも組み合わせて
そこへ西洋音楽の和声やリズムをうまく乗せて
まさにパッチワークのような形で作られて行った過程が
楽譜の例でいくつも示されています。

現代のポップスシーンを省みてみると
アメリカから輸入されたR&Bの影響を色濃く受けたものがかなり増えてます。
幼少の頃からこういった音楽を浴びながら育った子どもたちが歳をとり
老人になる頃の日本では
老いも若きもみんな複雑なリズムをさらりと歌うようになるのでしょうか??
確かに、環境というものの影響で、複雑なリズムへの適応力は今より進むと思うけれど
それが日本人が元来持っている言葉のリズムや精神性に根付くのか、と考えると
どうなんかな〜、と思ったりもして
そこまでの答えはこの本に書かれてないのだが
自分自身で作品を実際に作りながら、いろいろ考えをめぐらせてみるのも
おもろいかな~と思っています。
by satton07 | 2009-09-27 13:59 | たまには本でも


どもー。


by satton07

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