小泉文夫「日本の音―世界のなかの日本音楽 」

日本の音―世界のなかの日本音楽 (平凡社ライブラリー)

小泉 文夫 / 平凡社



この前、日本音楽史のスクーリングを受けたり
試験の専門教養で日本音楽とか民族音楽の理論をかじってたこともあって
ちゃんとその筋の本を読んでみようかな、てゆーか興味があって
読んでみることにしました。
めちゃめちゃおもろいです。
思わず、小泉氏の著作3冊ほど読んでしまいました。
順に紹介するとして、今回はこれ。

日本音楽といえば、能や雅楽、三味線音楽に箏曲から
民謡までさまざまな形態があるのですが
それは日本固有の伝統的音楽ではなくて
世界の民族音楽の大きな流れの中で育ってきた音楽である、というのが
かなり大まかな概要なんですが
ものすごく説得力がある理論です。
日本音楽の基本的なことを知りたい、という人には
かなりおすすめな本です。
読む前に簡単な楽典と
ごくごく簡単な、民族音楽の種類や名前について知っていると
さらにわかりやすいかも。
自分の場合は、専門教養の勉強で
民族音楽についての用語をいくつかチェックしていたので
ああ、この言葉はそういう意味なのね、とか
言葉と言葉のつながりが見えてきたので
そういう意味でも、読んでておもしろかったです。

最近は学校教育でも
日本の伝統音楽を教材としても取り上げられているけど
正直なところ、お琴や三味線の授業を通じて
これが日本の音楽だぜ
他の国にはない独自の文化なんだぜ
自分たちが作ってきた自分たちのものなんだぜ、的な
お上の意図を感じ得ないというか
そういう部分に違和感を感じてもおりました。
その辺の違和感の正体を
きちんと理論立てて説明してくれた感じです。

日本音楽の代表例として、雅楽がよくとりあげられますが
あれは厳密には、日本のオリジナルの音楽ではなくて
中国や朝鮮から伝わってきた音楽であり
当時の日本においても
ごく限られた階級の人間の、限られた目的のために使われた音楽であって
それをとって、日本人の心を表すとは
到底言い切れるようなもんではないということです。
「日本の中にあって日本の性格、日本人的要素をもちながら
なおかつ、それが超民族的に人類一般の音楽の美しさに
広がって行く可能性を持った音楽」という意味で、
日本の代表的な音楽である、と述べられています。

日本音楽のなかにあるさまざまな形態は
それぞれが関係し合って発達してきたものであると同時に
たとえば三味線音楽でも楽器の形や歌い方、演奏のしかたの微妙な違いで
多くの流派が生まれたように
それらはなにかひとつのカテゴリーに収斂されていくものではなくて
むしろ、その時々にもっともふさわしい形で
ふさわしい表現技法、という考え方で広がって行ったようですね。
その音楽を誰が、どういう階層の人たちが担ってきたのか、によって
大きくその特徴が異なっており
そこには、日本が辿ってきた、
歴史的な社会構造が色濃く反映されていているのが、大変興味深いです。


西洋音楽のように、合理的で体系的な理論体系で
いわゆる形式的な部分の美に重きを置く特質とは
そもそも異なっていて
日本音楽も含めた、東洋の音楽は
普遍的で形式的な理論体系よりもむしろ
たとえば音階においても微妙な音のズレや、音の間、
西洋音楽では重視されないような、はっきりとした音程のないような音など
おそらく、人間が本来持っているリズムや感覚に近いものを
重視した音楽の体系になっているのかな、とおもいます。

あと、楽器の歴史をたどるのも、なかなか興味深いです。
有名なところだと、琵琶なんかがそうですが
日本の琵琶は、中国から伝わってきたものだけど
その楽器は、もともとインドから伝わってきたものだそう。
で、その楽器の歴史をたどると、
イランのウードという楽器に行き着くそうです。
このウードが、ヨーロッパに伝わり
リュートやギターとして進化していったそうですが
元をただすと、同じところへ繋がって行くのですね。
同じ起源の楽器でも
西へ伝わると、合理的な和声と旋法をベースとした楽曲に使われ、
東へ伝わると、仏教の語りものの音楽の伴奏として使われたり、と
文化の違いで、こうも異なってくるというのが
とても面白いと思います。

世界の民族音楽のなかのひとつ、として
日本音楽を捉えて、その普遍性や特殊性を語るスタンスがかなり好印象。

ちなみに著者の小泉文夫は、民族音楽学者。
インドに留学、インド音楽についての研究をした後
東京芸大で教鞭をとりながら
さまざまな民族音楽を収集、研究、紹介したそう。
かの坂本龍一も、芸大の作曲科の学生の頃
当時楽理科のために開講していた、小泉氏の講義に通って
多大な影響を受けたそうです。
そうか~、なるほどな~、
それで、ああいうスタイルの音楽なのかな、とおもいます。
[PR]
by satton07 | 2009-09-20 12:33 | 読んだ本


どもー。


by satton07

プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

ブログパーツ

カテゴリ

全体
Profile
音楽活動
Diary
読んだ本
観に行ったライブ
ウチのCD棚
ウチのCD棚♪ブックマーク
たび
おきにいりのお店

Bookmark

フォロー中のブログ

おキモノでSoul
chikazoのページ
音楽の杜
さっぷうけい。
Oh, My God!!!
日々のわたくし
できれば、平和に、すごしたい。

最新のトラックバック

http://venus..
from http://venusha..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..

以前の記事

2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
more...

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧